おかげさまで、たいへんおいしいお茶をみなさまにお届けできることになりましたが、
ここまでたどり着くには多くの人の力が必要でした。
そんなルート・ティーの誕生秘話を、名付け親の堤がご紹介します。
「お客様をはじめ、協力会社さんなど、日頃お世話になっている方々へ感謝の意を込めて、
ルート・シーならではのノベルティを作り、お配りすることになりました。
そこで、何を作り配ったらいいのかというアイディアをみなさんから大募集します!」
2014年3月某日、社内のスタッフ全員に向けて、こんなメールが送信されました。
「ノベルティか…」
楽しそうとは思いながらも、いつもの業務ではあまり体験することのない、リアルなモノを企画するというミッションのせいか、良いアイディアが出せるだろうかという不安もよぎりました。
そんなことを思いながらメールの文面に目を通していると、最後の方に「採用者には金一封」の文字が。
僕は、この企画に真剣に取り組むことにしました。
ゆるキャラの「ふなっしー」をもじった「ルトッシー」。
おなじく古都のゆるキャラをもじった「るうとくん」。
意気込みとは裏腹に、どう具現化するのか自分でも分からない、不毛な案ばかりが思い浮かびます。
発想の精度を上げるため、
「社名にちなんでいる」「配った先でシェアできる」「オモロイ」
という条件を設定し、仕切り直して考え抜いた結果、次の案が生まれました。
良く言えばシンプル、率直に言えば無難な案が出揃いました。
ダジャレに終始しているのが多少気になりましたが、どれも実現しやすそうという点ではイケそうな気がしましたので、これで提出することにしました。
アイディアを出してしばらく経ったある日の朝、僕が考えた「ルート・ティー」が見事採用されたと発表されました。
あんなダジャレ由来のアイディアで良かったのだろうかと、他の応募者に対して一抹の申し訳なさを感じつつ、社長から贈呈された金一封をおずおずと受け取りました。
こんな経緯で産声を上げた「ルート・ティー」ですが、むしろ大変なのはそれからでした。
開発に向け「ルート・ティー実行委員会」が結成され、度々ミーティングが開かれました。
「ノベルティを『お茶』にするということは決まったものの、単に市販品を用意するだけでは芸がない」
「社名に因んだネーミングにしたからには、もらった人が感心するような気の利いたことをしなければ」
委員会では活発な意見が出されましたが、何しろ「お茶」というWebとは遠い世界のもの。ここはひとつ、お茶のプロに相談しようということになりました。
ご相談を持ちかけたのは、響庵(ひびきあん)の安井さん。
京都で日本茶の海外向けECサイトを運営されながら、「宇治茶伝道師」としても活躍していらっしゃる方で、ルート・シーでECサイトをお手伝いさせていただいた時に、現地の茶畑を案内していただいたり、お茶の歴史や種類、楽しみ方などをゆっくりと時間をかけて教えてくださったり、お茶の素晴らしさを教えていただいたお客様です。
ノベルティが「お茶」ということならば、安井さんしかいないだろう。とプロジェクトメンバー全員一致の思いをお伝えしました。安井さんは、お忙しいにもかかわらず、「とてもおもしろそうですね。」とにっこり微笑んでご快諾くださり、「ルート・ティー」の完成に至るまで、様々な面でサポートしてくださいました。
「ルート・ティー」をどういうお茶にすれば良いかアドバイスをいただこうと、響庵の安井さんのご紹介で、京都にある日本茶の製茶メーカーさんを訪れました。
応対してくださったのは、常務取締役の高木さん。
緑茶発祥の地として知られる宇治田原町でお茶を製造していらっしゃる、お茶のスペシャリストです。
「玉露はおいしいけど、意外性はないかなあ」
「ほうじ茶なんかは、案外ハマるかも」
いろんな種類のお茶を飲み比べながら、話し合いは続きました。さすがお茶のプロ、様々なお茶を提案してくださいました。
しかし、お渡ししたお客様にオフィスで美味しいお茶を手軽に楽しんでいただきたいということで、形式は「ティーバッグ」にしようということは決まったものの、肝心のお茶の種類については、なかなかこれというものにたどり着きません。
ポイントは「斬新なお茶」を作ってみたいという我々の思い。会議は煮詰まってきました。
「碾茶はどうかな…」
ふと思いついたように、安井さんがつぶやきました。
聞けば、碾茶とは抹茶の原料となる茶葉のことで、市場には流通していないものの、その味と香りはお茶のプロも太鼓判を押すほど素晴らしいものだそうです。
「それは確かにおもしろそうだけど…、できるかな」
高木さんも真剣な表情で考えこまれました。
(高木は頭を抱えた…)
そんなプロジェクトXのナレーションが聞こえてきそうなほど、その場が独特の緊迫感に包まれました。
「碾茶」・・・
見たことも聞いたこともない未知なるお茶。我々の前に淹れられたばかりの「碾茶」が運ばれてきました。
一口飲みました。「?!」
「この上品な香ばしさ、たまりませんね…。」同行した弊社取締役の辻がつぶやきました。
今まで体験したことのない味わいが口の中に広がっていきました。
「ぜひ!このお茶を使いたいです」。我々は高木さん、安井さんに頼み込みました。
そんな私たちの熱意に応えようと、高木さんが、とりあえず開発期間として1ヶ月、ティーバッグに最適な茶葉の仕上げ方や製造工程、おいしい飲み方などを研究していただくことになりました。
我々は、まだ見ぬ碾茶のティーバッグを思い描きながら、メーカーさんを後にしました。
メーカーさんを訪れておよそ1ヶ月後、待望の試作品が届きました。
高木さんが試行錯誤を重ねて考案されたそのお茶は、ティーバッグになっても碾茶の持ち味、ピュアな味わいが損なわれていない、素晴らしい出来栄えでした。
試作品は社員にも配られましたが、初めて碾茶を飲んだ時の我々と同様、苦味や渋味を全く感じさせない味わいに皆一様に驚き、「斬新なお茶」という思いは、きっとお客様にも伝わるはずと確信しました。
いよいよ「ルート・ティー」は、商品化に向けて本格的に動き始めました。
ティーバッグを詰める容器の選定、パッケージやシールのデザイン、製造管理など、様々なタスクが待ち受けていました。
いつものWeb制作業務とは勝手が違うことも多々ありましたが、お茶の完成度に引けを取らないよう、妥協せずに取り組みました。
そしてついに、「ルート・ティー」が完成しました。
僕の気軽な思いつきで誕生した「ルート・ティー」ですが、多くの方々の協力を得て、当初の予想を遥かに超えた素晴らしいものができあがりました。
縁あって、このルート・ティーを入手された方は、お茶の味わいはもちろん、お茶を淹れる手間や待ち時間も楽しむつもりで、ゆったりとした贅沢なひとときをお過ごしいただければ幸いです。